「腕はもう大丈夫なの?」

刺された腕に視線を向ける。

「もー平気。
カッターだからたいしたことないよ」

時田くんは腕を回して見せるとニッコリ笑った。

立川紗耶香さんに、時田くんが刺されてから2週間。

わたしは付き合うふりをやめようと、言い出せずにいた。

怪我までさせておいて、『もう用無し』みたいな、失礼な扱いはさすがに出来ない。

でも、時間が経てばたつほど、言い出すのが難しくなりそうで。

どうすればいいのか。頭を悩ませていた。

「さて、そろそろ休み時間終わるし、帰るね。
佐和ちゃんのクラス、甘味処だっけ?
準備頑張ってね」

ひらひらと手を振りながら時田くんが去って行く。

後ろ姿を見送って溜息を漏らした。

不意にとんとんと肩を叩かれ、わたしはびくっと背筋を伸ばして振り返った。