「サーヤそのくらいでやめなよ」

「ちょっと、刃物はやばいって」

戸惑ったような女の子たちの声がどこか遠くに聞こえる。

「なんで?」

巻き髪の女の子は呟くように言って、再びわたしの顔ぎりぎりに刃を向けた。

「痛い目合わせなきゃわかんないって、みんな言ってたじゃん」

怒りに燃えた彼女の目に、うっすら涙が滲んでいく。

朦朧とする意識の中で

ふと、気付いた。

彼女は時田くんが好きなだけなんだ。

でも、どうしていいのかわからなくて。

たぶん、混乱してる。


浅い呼吸を繰り返し、顎を逸らす。

朦朧とする意識を必死に繋ぎ止めきつく目を閉じた

しっかりしなきゃ。

このままじゃなにもわかってもらえない。

彼女をここまで追い込んだのは、わたしだから。

わたしには真実を話す義務がある。

時田くんは彼氏じゃなくて、わたしに協力してくれただけで。

わたしが好きなのは蓮くんだって。

ちゃんと、言葉にして伝えなくちゃ――

「佐和ちゃん!!」