矢継ぎ早に飛んでくる罵声に。

思わず耳を塞ぎそうになる両手を握りしめ、わらう膝を庇いながらゆっくり立ち上がった。

震える唇で必死に言葉を紡ぐ。

「確かに誤解されるようなとこはあったかもしれないけど、でもわたしっ」

そこまで言いかけた刹那、

突然目の前に突き出されたカッターナイフに私は息を飲んで、口を閉ざした。

「貴女が目障りなの」

巻き髪の女の子がわたしの頬すれすれに刃を当てて、赤い唇を動かした。

「あんたなんかに一樹は似合わない。
あんたみたいな最低女が一樹の彼女面してると思うとめちゃめちゃムカつくのよっ」

すーとカッターが首元に動いていく。

「一樹と別れて!」

「………」

わたしは答えを返そうと口を開いたけれど

結局はぱくぱくと虚しく唇を動かしただけだった。

『黙らないと痛くなっちゃうよ』

鳴海先生の言葉が頭を支配して。

声が出ない。

目はカッターナイフに釘づけで、瞬きすら出来ず、身体が硬直していく。

はあはあと、どんどん呼吸がおかしくなって、わたしは咽を押さえ膝をついた。