「駄目だよ浅倉っち。
佐和ちゃんは俺の彼女だよ?」

「それはお前がっ」

反論しかけた浅倉を制し、俺は説得するように続けた。

「なんであろうと今は俺が彼氏。
この状況で浅倉っちが出ていったら佐和ちゃん、ますます女の子達の心証悪くしちゃうよ。
それじゃ、助けたことになんないよね?
佐和ちゃんのためにも今は大人しくしててよ」

浅倉が焦りと怒りの混ざった目で俺を睨み、奥歯を噛み締める。

可笑しくて爆笑しそうになるのを堪え、

「ま、佐和ちゃんのことは俺に任せて。
浅倉っちは授業でも受けててよ。
後でノート貸してね」

俺は浅倉に背を向け教室を出た。


――なあ、浅倉。

自分の一番大切なものの運命を人の手に託すしかないなんてどんな気分だ?

最低最悪に胸糞悪いだろ?

「ご愁傷様」

口元に浮かびかけた笑いを、すぐに納め振り返る。

後ろから追いかけて来たアヤが意味ありげに俺を見上げ、横に並んだ。

「何を企んでるの?」

「別になにも?」

「うそ。サーヤを煽ったの一樹なんでしょ?」

「なにそれ。アヤちゃん人聞き悪いよ?」