SHRが終わって担任が教室を出る。

机に、だらんと力無く顔を伏せていた俺は、人の気配に気付き、身体を起こした。

「なに?浅倉っち。なんか用?」

欠伸を噛み殺しながら尋ねる。

険しい顔で俺を見下ろしていた浅倉が、腕を組み口を開いた。

「……聞きたいことがある」

ボソリと呟いて、顎で教室の外へ促す。

――佐和ミコトの噂のことか?面倒くせー

俺は頭をかきながら、立ち上がった。

「どこ連れて行ってくれるの、ダーリン? 一時間目始まっちゃうよーん」

おどけて言いながら浅倉の前に回り込む。

教室のドアに手をかけようとした瞬間、一足早くドアが開きアヤが顔を覗かせた。

「あ、一樹」

俺を見つけて、手を伸ばす。

「知ってる?さっき、佐和さんがね……」

言いかけて、彼女は俺の影にいた浅倉の存在に気付き、はっとしたように言葉を切って口許を押さえた。

「…あ…」

しまったとでも言いたげに、短く声を漏らす。

――なにそれ。計算?

俺はわざとらしいアヤの行動に辟易して、顔を反らし溜息をついた。