目を見開いたまま、無言のわたしを見て、藤平くんはそれが真実と気付いたのか、気まずげに顔を伏せた。

「ま、なんだ。それで、なんか変な風にその話に尾鰭がついちゃってるみたいでさ」

「尾鰭?」

「う、ん。
下世話だけど、佐和さんが男に身体使って迫ってるとか。いろいろ……
いや、違うって分かってるよ?
でも、佐和さん時田くんや浅倉くんとも親しいんだよね?
二人とも人気あるから、なんか女の子たちが嫉妬しちゃって。
ヒートアップしてるっていうか…」

彼がそこまで言った時、女子生徒が二人、こっちを見ながら廊下を通り過ぎて行った。

藤平くんは、

「あ!」

と短く声を上げ、顔を歪めて頭をかき、身体を起こした。

「ごめん。俺とこうしてても悪い噂立つかもだよね。
考え無しだったわ。
まずかったかな」

とにかく気をつけて、と藤平くんは言い残して立ち去って行った。