クラスの皆が、騒ぎながら昇降口を出ていく。

その後ろを歩きながら、

「ごめんね。
すっかり暗くなっちゃったね」

藤平くんが頭をかいて、恐縮した。

「ううん。
こういうの、なんか楽しいよね」

わたしは首を振って、髪を耳にかけた。

あの事件以来。ずっと、心を閉ざしていたから。

こんな風に、学校行事を楽しむのは随分久しぶりな気がした。

「いつの間にかクラスが一致団結って感じだしね。なんか俺ら青春してんね」

藤平んが冗談ぽく言いながら、鞄を持った両手を高く上げ、身体を伸ばす。

わたしは頷いて微笑むと、澄んだ夜空を見上げた。

遠くで瞬いている星が綺麗で、

目を細める。

ふと、視線に気付き、隣を見ると藤平くんがはっとしたように顔を逸らした。

「あー。っと、佐和さん家こっちだっけ?」

彼が慌ててゆび指した、その方向を見て、わたしは顔を強張らせた。

「ごめんなさい。そっちの道は通りたくないの」