10月に入って、学校内は俄かに活気づき出した。

11月頭に行われる文化祭にまで、あと一ヶ月。

進学校なだけに勉学も疎かに出来ず、準備時間は限られていた。

バタバタと走り回っている生徒の邪魔にならないように、廊下の端を歩いていた、わたしは

「佐和さん!」

呼び止められて、振り返った。

同じクラスの藤平くんが、くるくる巻いた模造紙を抱えて走り寄ってくる姿が見えた。

「今日さ、放課後残れる?」

「え?」

「模擬店の内装準備やるんだけど。人手足りなくてさ。遅くなったら帰り送るし」

「……う、ん」

「あ、えと。もしかして、約束とかあるの?」

藤平くんが顔を曇らせる。

わたしは慌てて手を振った。