ただ、キミが好き

リビングに入って、呆然と部屋を見渡した。

まるで嵐の後のように、なにもかもが散乱していた。
几帳面に本棚に並べられていたはずの書籍は、故意に床に投げつけられ

アンテークで揃えられた食器は粉々に割られ

きちんと配置されていた小物も叩き落としたように飛び散っていた。

俺は食器の破片を踏まないように注意しながら、真由の寝室へ向かった。

「真由?」

ノックをしても返事は返らない。

ドアノブを回し、中をのぞくと、破かれたカーテンと、床に叩き付けられた写真立てが見えた。

「真由?」

ベッドの上で毛布に包まって座っている真由を見つけて、歩み寄る。

途中何かが爪先に当たった。

視線を落とした先に転がっていた長細い四角い箱に、俺は思わず息を飲んだ。