ただ、キミが好き

途中果物を買ってから、真由のマンションに向かい、合い鍵で部屋のドアをあけた。

途端、妙な違和感を感じて俺は立ち止まった。

玄関に脱ぎ捨てられたミュール。

細いヒール部分には、まだ渇き切っていない土がこびりついていた。

――出掛けたのか?

腰を曲げて靴を揃えながら、眉をよせた。

彼女にそれだけの気力が戻ったと言うのなら、それはそれで問題はない。

でも、神経質な真由がこんな風に靴を脱ぎ散らかすとは考えにくかった。

余程急いでいたか。

それとも、真由の身に何かが起こったからか?

俺は慌てて、部屋に入った。