「最近、佐和ミコトって可愛くね?」

会議室のドアを開けかけて、俺は手を止めた。

半開きになったドアから、部屋の中の声が漏れてくる。

「佐和ってだれ?」

「1年5組の子で、浅倉の幼なじみっす」

「あーあの浅倉くんの後ろ歩いてた大人しそうな子ね」

「いや、前は確かに暗そうなイメージだったんけどさ。
この頃なんか違うんだよね。俺、この間笑いかけられちゃった」

「気のせいじゃないの?」

「いや、マジで。
俺のほう見てニコッと」

「後ろに友達でもいたんじゃないの?」

「いちいちうるせーよ。とにかく、あれは、かなりレベル高いって」

「そんなにカワイイなら、俺、会いに行こうかな」

「浅倉に睨まれますよ」

ゲラゲラと下卑た笑いがおこった。

俺は小さく舌打ちして、息を吐き、ドアを開けた。