胸に顔を伏せ、必死に訴える紗耶香の肩に手を置く。
ゆっくり押して引きはなした。

くわえていた煙草を箱に戻し、ポケットに捩込む。

「ありがとう」

俺は紗耶香にニッコリ笑いかけた。

「でもやっぱり、サーヤは彼女には出来ないよ」

「一樹っ!!」

「ごめんね。
もう佐和ちゃんと付き合い出しちゃったもん」

言いながら俺は、片腕を紗耶香の後頭部に回し、引き寄せた。

「でもサーヤは嫌いじゃないよ」

耳元で囁いて、唇を重ねる。

舌を絡ませ、深いキスを繰り返しながら、胸に手を這わせた。

「…あっ……」

目を閉じて声を上げる紗耶香をうんざりしながら見下ろし、分からないように、溜息を漏らす。

計画より少し早いけど仕方ない。

ぐずぐずしていたら、こっちの身も危うくなる。

甘い吐息の間に

「……佐和ミコトなんかいなくなればいいのに」

紗耶香の口から零れた、呪詛のような言葉に。

俺は髪に指を絡め、聞こえないフリをしながら、ほそく笑んだ。