眉を寄せて紗耶香は俺を見た。

「佐和ミコトって５組の暗い子だよね？
浅倉くんの幼なじみの。
じゃあ、昨日の女も彼女なの？」

「さあね。秘密」

人差し指を口元に当て、意味ありげに笑ってみせると紗耶香は、俺の制服を掴んで揺さぶった。

「なんで、あんな女なんかっ。
浅倉くんの気を引くために男嫌いのフリしてる、計算高い女でしょ！？
大人しい顔して腹黒いって皆言ってるよ？」

「サーヤは誰にでも噛み付くねぇ」

苦笑いして煙草を投げ捨てる。

「大体そーゆー情報はどっから仕入れてんの。
本当、女の子ってくだらない噂話好きだね」

「だってアヤがっ」

「ああ、アヤちゃんねー」

靴底で煙草を捩り消しながら、紗耶香に分からないように顔をしかめた。