「あー面倒くせー」

呟いて、口に挟んだ煙草に火をつけた。

屋上から見える空は雲一つない日本晴れで、澄み切った秋の風が柔らかく髪を撫でていく。

清々しすぎて、気持ちが悪い。

澱んだ紫煙を吐き出しながら、俺はコンクリートに寝そべった。


佐和ミコトのオドオドした自信のなさそうな顔は、どうしようもなくカンに障る。

宥めて窘めて甘い言葉を吐き出して。

馬鹿な女の機嫌をとる涙ぐましいほどの努力を、自分で讃えてやりたいくらいだ。

でも、もう少し我慢が必要だ。


佐和ミコトが完全に俺を信用するまで。

まだ、

迂闊なことはできない。