「目、つぶってくんない?」

「え?」

問い返すと

「いいから。目つぶって」

時田くんは優しいけれど強い口調で繰り返した。

恐る恐る目を伏せる。

「ここにいるのは、浅倉っちだよ。俺じゃない」

手が伸びてくる気配。

わたしは咄嗟に首をすくめ、身を引いた。

「大丈夫、怖がらないで、頭の中で、浅倉っちを思い浮かべて。
俺は浅倉蓮、だよ」

暗示にかけるように静かな口調で、そう言って

「……っ」

時田くんは羽のように軽く、頭に手を乗せた。

労るように、ポンポンと優しく叩いて、直ぐに離れていく。

「はい、よくできました」

目を開けたわたしに、時田くんはにっこりと微笑んだ。