ふと、目の前に影を感じて顔を上げた。

びくんっと身を引く。

時田くんが困ったような顔でわたしを見ていた。

「大丈夫。何もしないよ」

両手を肩まで上げて見せる時田くんに

「……ごめん」

小さな声で謝ると彼は微笑んで首を振った。

「浅倉っちが気になる?」

頷くと時田くんは難しい顔をして、ポケットに両手を入れた。

「追いかけて、来なかったね」

確認するように、道の突き当たりに視線を送る。

「気になって絶対、来ると思ったんだけどな」