「今日はあんまり仕事詰まってないから。
なるべく早めに帰るな」

べーグルをちぎりながら気を使う父親に、俺は作り慣れた即席の笑顔を返した。

「本当に大丈夫だよ。
仕事早いなら真智さんと会ってあげれば?
いい加減ほっといてたら逃げられるよ?」

自分勝手に家を開けることが多かった母親と、父親が正式に離婚したのが4年前。

その後直ぐに父親が付き合い出した彼女は、父親より一回り年下で、俺にとっては姉のような存在だった。

「そろそろ真智さんと再婚でも考えたら?
俺は別に構わないよ」