『吉仲先輩が自殺未遂したらしいよ』

教室に帰ってしばらくしてから、噂好きのアヤが駆け込んで来た。

『今、浅倉くんと帰ってるの!ほらっ』

無理矢理、窓際に引っ張られる。

アヤが指差す方向に、寄り添いながらタクシーへ向かう、二人の後姿が見えた。


目を逸らしたくても逸らせない。


窓枠の上で握りしめた拳が白く変色した。

『一樹? どうかした?』

アヤの言葉にかなり努力して笑顔を作る。

『別に』

それだけ答えて窓際を離れた。