ガジャンと音を立てて、ミコトの家の門に手をかけた。

走ったせいで、空気の回らない肺に浅く何度も息を吸い込む。

額から流れる汗を乱暴に拭い、門を押し開けた。

「はい。そこまで♪」

場違いなほど明るい声に振り返る。

暗がりの中に、人影が揺らめくのが見えた。

ほのかな光を発する二つ折りの携帯を閉じ、影は街灯の下で立ち止まった。

「……時田」

「せっかく待っててあげたのにそんな怖い目で睨まないでよ。
俺、泣いちゃうよ?」

時田が茶化すように言って、両手に顔を伏せ、泣きまねしてみせる。

「ここで、何してる?」

固い声で問うと、時田は手を離し、俺を見上げてニヤリと笑った。

「なにって、待ってたっつたじゃん。
遅かったねー。もー帰ろうかと思っちゃった」