「佐和ちゃん?大丈夫?」

俯いたままのわたしに時田くんが声をかけてくる。

わたしは込み上げそうな涙を堪え、顔をあげた。

「あ、ごめん。もしかして電話の相手って、浅倉っちだった?
俺、声かけたりしたら、まずかったよね?」

申し訳なさそうな表情で、頬をかく時田くんに首を振る。

「いいの」

呟くように答えて、わたしは握りしめていた携帯を鞄へ入れた。

大きく息を吐き出す。

しばらく躊躇った後、わたしは視線を落としたまま、口を開いた。

「時田くん」

「ん?」

「……さっきの返事、していいかな?」

「え?」

戸惑ったように、時田くんが聞き返す。