寂しさと苛立ちと憎しみを私は小さい一樹にぶつけた。

いなくなればいい。

本気でそう願った。

5歳くらいになると、私はそれを行動に出すようになった。

わざと吸入器を隠したり、

発作を見てみないふりしたり

苦しむ一樹の鼻と口を、押さえたり。


そんな私の卑屈さに母は苛立ち、手をあげるようになった。

でも

それでもよかった。

私を苛む間は

母は私を見ていた。

私だけを見ていた。

だから

叩かれても

切り付けられても

構わなかった。

そして、いつしか私は

与えられる痛みに

喜びすら感じるようになっていった。


でも


病んでいく私の精神に最後の歯止めをかけたのは、一樹だった。