秋の気配を感じさせる、温度を落とした風が、ピンクのカーテンを膨らませる。

窓に向かってぴたりと着けられた机の上の参考書が、パタパタと微かな音を立てた。

「…だからy軸の上にXがある時、X=0になるからこっちの公式を使って……」

耳に心地よく響く、低く甘い声。

両手で持った参考書を顔にあて、声の主を、隙間からそっと盗み見る。

サラサラとノートの上を滑る、節のある綺麗な指。

そこから続く、長い腕。

深い鎖骨。

尖ったシャープな顎。

形のいい、意志の強そうな唇。

通った鼻。

フレームなしの薄い眼鏡。

その奥で伏せられた、涼やかな切れ長の瞳。