どうやら、

浅倉を煽ったのは失敗だったようだ。

あのクールぶった男が、こんなにかわいらしく過剰反応するなんて、

予想外もいいとこだ。

「馬鹿みたいに、忍耐強く清いお付き合い続けてたくせにね。
とうとう、切れちまったか」

お気の毒さまだ。

込み上げる笑いを噛み殺しながら、教室には戻らずに人気のない屋上へと向かった。

貯水タンクをのせた、かび臭いコンクリートの壁に寄り掛かると、さらに笑いの波が押し寄せた。

「やべ、止んねー」

引き攣るように肩を揺らしながら、ポケットから煙草を取り出す。

火をつけ、歪んだままの唇に押し込んだ。

深く吸い込み、吐き出す。

煙が風に流されていく。

その行方を目で追いながら、俺はようやく息をついた。