パタパタと走り抜けて行く彼女の腕を捕らえようとして、俺は手を下ろした。

「今日はこのくらいで辞めとくか」

これ以上怖がらせて、完全に避けられても、困る。

俺は手に持っていたポケットティッシュを植え込みへ投げ捨て、歩き出した。

彼女の男に対する異常なまでの拒絶反応。

その理由は彼女と同じ中学で一緒の塾に通っていたという、アヤって女から簡単に聞き出せた。

まあ。結果的にエリの嫉妬を煽って、顔に傷を入れられたが。

『彼女中2の時、塾の鳴海って先生に犯されたの。浅倉くんが先生ぼこって、塾辞めさせたみたい。警察沙汰にはなってないんだけど。結構有名な話だよ』

通りでと

納得した。

浅倉が彼女に手を出していない理由に笑いが込み上げた。

大切な大切なお姫様。

奪い取ってやったら、奴はどんな顔をするだろう?

「割と楽しみにしてたのに。残念」

佐和ミコトは

変わってしまった。

男に免疫が出来たせいだろう。

少しだけ警戒が和らぎ、

前に会ったときには感じなかった、女の部分がやけに鼻についた。