やっぱり

彼の視線は、なぜか落ち着かない。

「俺さ、マジで佐和ちゃんタイプなんだけど」

時田くんはわたしを見つめたまま、ゆっくり身体を起こした。

「俺にはもうチャンスはないのかな?」

「………」

返答の言葉に迷い、俯いてバッグを抱きしめる。

短い沈黙の後、時田くんが、ふっと息を吐いた。

「やっぱり、どんなに裏切られても浅倉っちしか見えない?」

ちくりと胸を刺されるように痛みが走った。

「……ちが…う、蓮くんは……」

裏切ってなんか、ない。

もともと

蓮くんはわたしの彼氏じゃないもの。

―――でも。

「……ごめんなさい」

わたしは頭を下げると早足に時田くんの脇を擦り抜けた。