顔の近さに、慌てて身体を離す。

「そんなに警戒しないでよ。本当になにもしないからさ」

彼は傷ついた表情を浮かべて唇を歪めると、証明とばかりに両手を上げて見せた。

「泣かせてごめんね。ちょっと確かめてみたかっただけなんだ」

「…何を?」

「佐和ちゃんの男嫌いの度合い」

理由が分からなくて、わたしは眉を寄せた。

「どうして?」

「佐和ちゃんが気になるから」

悪びれもせずケロリとそう言いきって、時田くんは身を屈め、さっき地面に落ちたポケットティッシュを拾いあげた。

「浅倉っちが好き?」

砂埃を払い、わたしを上目使いに見つめる。

その顔は、どきりとするくらい妖艶で

つい引き込まれそうになって、目を逸らした。