「…やっぱり、なんかあった?」

時田くんは身を屈め、わたしを覗き込んだ。

「この間の佐和ちゃんとなんか違う気がする」

「…は、なして」

顔を逸らし、腕を引く。

時田くんはがっちり手首を掴んだまま、薄く笑った。

「なにもしないからさ。逃げないでよ」

どんどん心臓が速くなって、喉が詰まったように息が苦しくなる。


『何で逃げるの?佐和さん』


先生の顔が時田くんと重なって見えて目眩がした。

嫌だ。

怖い。

怖い。

怖い。

強く閉じた目に涙がにじむ。

不意に

腕を解放された。

「……ごめん」

申し訳なさそうな時田くんの声に、わたしは目を開き、顔をあげた。