ただ、キミが好き

「……へぇ」

じっとわたしを見据え、時田くんが小さく呟く。

どうしてだろう?

なぜか時田くんに全て見透かされている気がして、わたしは目を泳がせた。

わたし達の間に何があったかなんて、彼にわかる訳無い。

そう思っても、言い知れぬ不安が募り、胸がざわついて落ち着かなかった。

じゃりっと靴音を立てて、時田くんが近づいてくる。

ビクッとして身を引きかけたわたしへ

「それ、貰っていい?」

彼はにっこり微笑んで掌を差し出した。

目を合わせられないまま、ポケットティッシュと絆創膏を手渡す。

瞬間、

「…!……やっ!」

きゅっと時田くんに手首を握られ、わたしは動転して、それを取り落とした。