ただ、キミが好き

「次、体育?」

「え、あ、はい」

質問にぎこちなく頷く。

時田くんは声を立てて笑った。

「アハハ。なんで敬語なの?同い年なのに」

顔をクシャクシャしている様子は、好意的で。

裏があるようには見えない。

やっぱり、嫌われるわけじゃないのかな?

安心したせいか、わたしはその時ようやく時田くんの頬についた赤い傷に気付いた。

「あの、…ホッペタ、血が」

「ん? ああ」

彼は掌で傷痕をさすり、苦笑して肩を竦めた。

「別れ切り出したら引っかかれちゃった。女の子の爪って凶器だよね」

「よければ、使って?」

体操服入れを探り、ポケットティッシュと絆創膏を取り出し差し出す。

時田くんは意外そうにわたしを見て、眉をあげた。

「ねぇ、佐和ちゃん。浅倉っちとなんかあった?」

その質問の意図はわからないのに。

カアッと顔が朱に染まった。