ただ、キミが好き

「あれえ、佐和ちゃん。こんにちはー」

――え?

わたしは瞬きして彼を見た。

さっきの顔は、見間違いだった?

そう思うほど、明るく人懐っこい笑顔向けられて、怖ず怖ずと頭を下げた。

「こんにちは」

つい声が小さくなる。

時田くんは困ったように首を傾げた。

「ごめん。また怯えさせちゃった? さっきちょっと嫌なことあって……怖い顔してたかな?」

「…いえ」

違和感を感じながらも、わたしは少しほっとして、首を振った。

あの敵意に満ちた目がわたしに向けられたものだったとしたら――

――そう考えるのは、怖い。

まるで、見えないナイフを突き付けられたように。

鋭くて。

直情的な悪意だったから。