ただ、キミが好き

『古い傷は母が付けたの』

赤い唇が微笑む。

『新しい傷は私が』

『………』

彼女の瞳の妖しさに圧倒され、自然と喉が鳴る。

『なんで……』

『痛みで確かめてるの。私が……生きてるかどうか』

真由は袖を元に戻し、ボタンを止めた。

『………』

『ねえ、浅倉くん』

真由の手が再び絡まる。

俺は彼女を突き放せないまま、横を向いた。

『行き場のない気持ちは小さな痛みを伴っても、発散しなければダメよ』

真由の冷たい手が頬に触れる。

彼女は掌で挟んで俺の顔の向きを変えた。

『溜め込んだままいたら、いつか何もかも壊してしまうわよ?』