ふっと受話器越しに浅い溜息が聞こえた。

「……悪い話?」

「………」

黙ったままの俺に全てを悟ったように真由の声が沈んだ。

「……分かった。明日ね」

プツッと通話が切れる。

俺は携帯を閉じ、顔から手を離した。

ゆっくり目線を上げる。

リビングの中央に置かれたソファーが視界に入った。


『蓮くん』


耳に残ったままの、ミコトの甘い声が蘇る。

ソファーに広がる細い髪。

切なげな息遣い。

赤く色づく白い肌。

濡れた唇。

潤んだ瞳。



彼女に囚われて、

彼女のことしか考えられない自分が滑稽で、

横を向きソファーから顔を逸らした。