「好き」と

唇を形づける前に、蓮くんの携帯が机の上で震え出した。

がたがたと音をたて、着信ランプが、責め立てるように光る。

「…ごめん」

蓮くんが携帯を持ち上げ、立ち上がった。

着信を確認してから、部屋を出ていく。

その後ろ姿を見送って、

ことんと机に頭を落とした。


誰から?


それは

聞かなくても分かってる。

目を閉じると

吉仲真由の赤い唇が、毒々しいくらい鮮明に

瞼に浮かんだ。