静かな空間にシャープペンを走らせる音と時計の進む音だけが響く。

うるさい心臓の音まで聞こえてしまいそうで、

椅子を引くふりをして、隣に座る蓮くんから、少し身体を離した。

「ミコ、問2違う。公式はこっち使って」

参考書を机の上に拡げ、蓮くんが黒枠で囲まれた公式を指し示す。

盗み見た横顔は、何もなかったみたいに普段通りで、

一人で舞い上がってる、自分が馬鹿みたいだ。


ダメだ。ちゃんと集中しよう。


軽く頭を振って消しゴムに手を伸ばす。

同時に伸びた指先が、


「…!」



重なり、触れ合った。