「最っ低ーっ!!」

パシンっと肌を打つ高い音が、響く。

駆け出して行く、女の後ろ姿を見送ってから、

「―…っ」

俺は痛む頬に手を当てた。

叩かれた時に長い爪が引っ掛かったらしい。

うっすら血が滲んでいた。

ため息をつき、手の甲で乱暴に拭う。


毎度ながら、

女はよく怒る生き物だ。


大体、

俺の外側しか見ないで、迫って来たのはお前の方だろう?

よく知りもしない相手に簡単に身体を許して

当然の代償のように心を要求するなんて、

そのほうがルール違反じゃないのか?

「サイテーはお互い様」

ぼそっと呟いて、両手をポケットに突っ込み歩きだす。