エリは憤然と肩を聳やかして、人気のない体育館裏までくると、腕から手を離し俺を睨み上げた。

「なに?」

ポケットに両手を突っ込んで首を傾げる。

ネクタイを掴まれ、強引に引き寄せられた。

「アヤと浮気したでしょ!?」

怒りに顔を染める彼女が、妙に滑稽に見えてくる。

「浮気?」

押し殺した笑いが込み上げた。

堪え切れず肩を揺らす。

エリは俺の反応を青い顔で見つめ、不安そうにネクタイを離すと眉を寄せた。

「ねぇ? 私達付き合ってるんだよね?」

「………」

「一樹、私のこと好きだよね?」

「……悪いけど」

笑いを止めて、彼女を射るように見る。

勘違いを正すように殊更ゆっくりと言葉を発した。

「好きじゃない」