真由は母親を慕っていた。

母親の愛情を求めていた。

あの女に振り向いてほしくて、

あの女に認めてほしくて、

ただ、それだけのために彼女は生きていた。

願いは叶わず

祈りは裏切られて、

絶望が彼女を支配していることは、たやすく想像できた。

「俺がいるから! 俺、姉さんが必要だよ? だから死ぬなんて考えないでよ!」

「………」

「あんな最低女のことなんて忘れろよ! ねぇ姉さん!」

「………」

黙ったまま反応しない真由に、怒りとも悲しみとも付かない感情が沸きだす。

おそらくは

母親しか見ていない彼女に、ただ嫉妬していたのかもしれない。

喉の奥が熱くて

苦しくて、


俺は

その熱に押し流されるように、

真由の唇を、


奪った――。