「姉さん!?」

声が上擦る。

シンク下の扉に体を預けるようにして真由が座っていた。

片手に果物ナイフを持ち、なにも見ていないような虚ろな目で、彼女は腕に足に細かい傷を付け続けている。

飛び散った血液が白い服やフローリングに付着し、赤に染めあげていた。

「なにやってんだよ!!」

手を掴んで、動きを封じる。

ナイフを握りしめたまま、ぼんやりと床を見つめている真由の、凍ったように固まった指をゆっくり一本ずつ剥がした。

ナイフを取り上げ、シンクに放り投げる。

肩で息をついてから、ぎりっと唇を噛み締めた。


助けも求めず、相談もせず。


こんな風に一人で抱え込んで、自傷行為に走る真由に俺は腹を立てていた。