「一樹?」

投げ掛けられた、気だるげな声に、ベルトを通す手を止めて、顔だけで振り返った。

毛布から白い肩が覗いている。

「あ、起きたの?」

シャツに腕を通しながら尋ねると、返事の代わりに軽い溜息が聞こえた。

「どうかした?」

枕元に移動して腰を下ろす。

スプリングが軋み、鈍い音を立てた。

寝たふりをしている彼女の長い黒髪を、一房持ち上げてキスをする。

「おはよう」

目を開いた彼女にそう告げると、不機嫌そうに顔を逸らされた。