ただ、キミが好き

彼女の香りのするシャツを、蓮くんが脱ぎ捨て、肌が直接触れ合う。


暖かくて、心地よくて、


しなやかな背中に腕を回し、目を閉じた。



あの日は、恐怖しか感じなかった。

無理やり引きずられて、押し倒されて。

体を組み敷かれた。

「いやああああ!」

昨日まで普通に先生と呼んで慕っていた男の人が、あんなに豹変するなんて信じられなかった。

「なんで、つきあってくれないの?好きだっていってるのに」

血走った目。

「黙らないと痛くなっちゃうよ」

チキチキとカッターナイフの刃を出しながら笑う歪んだ顔。

切られた首より体を這い回る手に痛みを訴えた。

押し付けられる唇に吐き気がした。