「…行かないで」

白いシャツに、頬を押し付ける。

蓮くんは振り返らないまま、身じろぎした。

「……ミコ?…コーヒー入れるだけだから……」

「…お願い。…離れて、行かないで」

引き止めるようにそう呟いて、腰に絡めた腕に力を込めた。

心臓の音が

蓮くんのものなのか、自分のものなのかわからなくなるほど

ぴったりと身体を密着させる。

「ミコト?」

困惑した蓮くんの声が、微かに震えて、緊張したように、しなやかな背中が固まっていく。

蓮くんの反応が怖くて。

張り裂けそうな胸が苦しい。

わかってる。


わたしは、


愚かしくて、狡いことをしようとしてる。