実は、陽子の旦那は、もう既に、女性と暮らしていた。
もうすぐ、子どもも生まれてしまうくらいお腹も大きくなってるらしい。
その前に籍を入れたいと迫られたらしく、慰謝料も養育費も子どもの親権も何もかも、すんなりと解決した。
何も揉めることなく、あっけらかんとした最後だった。
というのも、陽子自身が、旦那を攻めることなく、すんなり判を押したからなのだけど・・・
揉めたところで、何も良い方向には進まないという、母子の話し合いの末に出した結論でもあった。
そう、アカリはとても大人びた性格で、どちらかというとお人よしの陽子のよき相談相手でもあった。
「たくさん慰謝料をもらって、二人で楽しく暮らそう」という、アカリの言葉どおり、しばらくは食うに困らない額をちゃんともらったし、アカリの将来もしっかり保障してくれるというので、しばらくのんびり、第二の人生を考えるつもりでいた。
でも、陽だまり荘を目の当たりにした陽子は、すぐに気持ちが変わってしまった。
さすが、母一人子一人でずっと一緒にいただけあって、アカリはすぐに母親の考えてることは分かった。
目が合ったとたんに、大きなため息とともに、仕方ないなあというように、オーバーなくらいのリアクションで、肩をすくめた。
何も言葉はなくても、二人の中で心は決まっていた。
陽だまり荘を始めよう。
それからの時間はあっという間だった。