それはあたしにとって

初めての気持ちだった。



彼の笑顔にホッとして


胸の奥が温かくなって



そして――



「あっ、桃崎さんが笑った」



自然に、笑みがこぼれて。





斗馬くんが嬉しそうに指摘するまで、あたしは自分が笑っていることに気づかなかった。




あたし……

笑えるんだ。




やさしい風が心に吹いて


ほんの少しだけ


景色が変わったんだ。