「向こうではどうだった?」 麗子さんは長い指先でカップを口に運びながら、優しい瞳を滑らかに曲げる。 「ええ、麗子さんのお陰で充実してました」 「そう、良かった。清吾には…まだ?」 清吾、は父の名前。父を名前で呼ぶ人はもうあたしの知る限り麗子さん一人だけ。そしてその質問が意図するのは 「父は…働く必要はないと思っているでしょうから」 あたしの将来。 語学留学は確かなのだけど、その実あたしは麗子さんに紹介された翻訳家の先生の元で過ごした。