「綺麗なリング、ですね」


冴木さんの澄んだ瞳があたしの左の薬指を捉える。


「唯一、彼と同じ物ですから」


「…とても素敵です」



シンプルなリングなのに彼女は眩しそうに目を細める。


「部長は贅沢ですね」


「え?」


「綺麗なリングに綺麗な婚約者。」


聞き慣れたセリフなのに、彼女が言葉にすると妙に罪悪感が沸く。


「だけど、愁ちゃんには幸せとは言い難いですわね。」


愁ちゃん、なぜいまその呼び方をしたのかに特に意味はないけれど。


「部長は優しいです。きっとあなたの事を第一に考えると思いますよ」


ハキハキした言葉。『優しい』の単語。


「あなたにはいい上司なのね」


愁哉さんに穏やかに映れるあなたが羨ましい。


「本当に欲しい物なんて、手に入らないから欲しいんですわ」


あたしは呟く様に言葉を落とした。