彼女は戸惑った様だったけれど、「お忙しい身でしょうに私なんかと」と謙遜する。 「忙しくなんてないですわ。運転手を待たせてありますから一緒にいらっしゃる?それともここから歩いていける場所かしら?」 引かないあたしに、軽い押し問答の後、 冴木さんは、尚、戸惑った様に一瞬吐息を漏らすと、すぐに吸い込む。 「お口に合うかは分かりませんがここから歩いてすぐの洋食屋にご一緒しましょう」 やっと隔たりのない笑顔を向けた。