会社を出て、専用の車を呼ぶ。いつもの流れのそれを止めたのは


「あら」


その視線の先に、まだあたしの思考を占める女性の顔を見つけたから。


「冴木…様でしたわよね?」


あたしはその女性に微笑みかける。


「ええ、先程はお邪魔してすいません」


綺麗な姿勢で頭を下げる仕草に作り笑いでない微笑が洩れた。きっととてもきちんとした方なんだろう。


「今からどちらに?」

あたしは会話を終わらさない。

「昼食です」


冴木さんの答えにあたしが取る行動は決まっていた。

「ならご一緒に」


有無を言わせない口調にもようやく慣れたのか、身についていたものなのか。