彼女がこの場を通り過ぎる直前まであたしはその姿勢の良い背中から目が離せない。 その背に視線を送る 愁哉さんの優しい眼差しにも。 「…愁哉さん、少し屈んで。」 あたしは怪訝な顔をする彼に構わず、視線の同じになる位置まで来た彼の唇を塞いだ。 「一人で戻れますわ。」 別に、挑発した訳じゃない。 ただ、あの僅かな香りが誰の移り香なのかを知りたかっただけ。