嘘つき①【-ハジマリ-】


「電気ついてたからな、冴木だと思ったが」


黒くて綺麗な瞳が細められてクールな口調は彼の雰囲気そのままで、やっぱり、すごく、いい。


「部長は、今まで出てたんですか?」


よく見るといくつかのファイルケースに鞄。


「ああ、今日中に仕上げたい仕事があったからな」


淡々とそう言うと、


「冴木はまだ帰らないのか?」


そういえば…今、何時?そうね、大体ね、なんて歌詞が頭に浮かぶくらいあたしは、部長と2人っきりのこのシュチュエーションに盛り上がっていた。


「あ、もうこんな時間でしたか。もうすぐで終わるんで仕上げて帰ります」


部長はあたしをフッと見つめて「そうか」と笑う。…もう会話終わっちゃった。


だけど、この企画書の期限は明日。あたしが決めたんだから、やりきる。