「花梨、今日飲みに行こうよ」
同期の里穂は定時を迎えて愉しげにあたしに声を掛ける。いつもなら『いいねー』なんて乗っかるけど、今日は、
「冴木花梨、今日はもう少し頑張ります、隊長」
敬礼すると、「苦しゅうない、ほどほどにな」里穂は頷いて、あたしの肩を叩いた。
それから、またパソコンに顔を向けてキーボードを叩く音だけが響く室内。時間は止まる事なく緩やかに流れる。
…何時になったかな
顔を上げて時計へ振り返る。腕時計、なんてしない。くすぐったいし。
だけど、顔を上げた先には
「眉間にシワ」
「…ぶ、部長!!」
なんでここに!?
いや、会社だから当たり前なんだけど。

